ご高齢の方の骨粗鬆症性椎体骨折
ご高齢の方の背中の痛みのうち、見落とされやすいものの一つが骨粗鬆症による椎体骨折です。早めの評価が、歩行能力と自立した生活を守ることにつながります。
執筆・監修:ラウ・ロクリム医師(Dr Lau Leok Lim)
整形外科・脊椎外科 シニアコンサルタント
MBBCh ・ MRCS(エディンバラ) ・ MMed(シンガポール国立大学) ・ FRCS(エディンバラ)
シンガポール保健省 専門医登録番号:11302F ・ Orthopaedic & Hand Surgery Partners ・ Gleneagles Hospital ・ シンガポール
原稿(英語版)公開日:2026年3月1日原稿(英語版)最終監修日:2026年3月15日日本語版公開日:2026年8月21日

ご高齢の方の背中の痛みの原因
背中の痛みはご高齢の方にとても多くみられます。多くは筋肉の損傷や加齢に伴う脊椎の変化によるものですが、とくに骨粗鬆症のある方では、軽い転倒の後の突然の強い痛みが椎体骨折の兆候であることがあります。
- 筋肉の損傷や靳帯の損傷
- 椎間板変性症
- 椎間関節の変形性変化
- 脊柱管狭窄症
- 変性性脊柱側弯症
- 骨粗鬆症性椎体骨折
このうち、骨粗鬆症性椎体骨折は見落とされていることが少なくありません。
椎体骨折を疑う兆候
ご高齢の方の背中の痛みで注意したい兆候
- 軽い転倒やちょっとした前屈みの後の、突然の強い痛み
- 背中や腰の、場所のはっきりした鋭い痛み
- 寝返りや、いすから立ち上がる動作がつらい
- 背中が丸くなってきた、身長が縮んだ
- すでに骨粗鬆症と診断されている、または過去に脆弱性骨折を起こしている
これらにあてはまる場合は、早めに医療機関を受診してください。
経皮的椎体形成術とは

経皮的椎体形成術は、痛みを伴う骨粗鬆症性の椎体骨折を安定化させるための低侵襲的な処置です。画像ガイド下に骨セメントを注入します。
- 骨折部を安定化させます
- 選ばれた方では痛みの早い軽減が得られます
- 動きやすさが改善し、日常生活への復帰を支えます
ある患者さまの例
ご家族との旅行を楽しみにされていた80歳の女性の方が、人ごみを避けようとして足をもつれ、尻もちをついて転倒されました。レントゲンと MRI の結果、第12胸椎の骨折が確認されました。
じっと横になっていると痛みはやや楽になるものの、動くたびに鋭い痛みが走り、家族旅行はむずかしいと思われていました。選択肢をご相談した上で、経皮的椎体形成術を選ばれました。
処置から2か月後、ご家族と南極への旅行に行かれました。
ご本人とご家族に知っていただきたいこと
- 転倒の後の突然の強い背中の痛みを、歳のせいと見過ごさないでください
- 骨折の有無を確かめるために、早めの評価を受けてください
- 早い診断が、適切な治療の選択につながります
- 骨粗鬆症の治療は、次の骨折のリスクを下げます
- 経皮的椎体形成術などの処置が選ばれた方に役立つことがあります
よくあるご質問
なぜ骨折が起こるのですか
弱くなった骨が、日常の動作でかかる力に耐えられなくなることで生じます。
どのような症状が出ますか
背中の中央や腰の、突然の痛みが多くみられます。
すべての椎体骨折に手術が必要ですか
いいえ、ほとんどは必要ありません。安静、装具、活動の調整で改善する方が多くあります。
回復にどのくらいかかりますか
痛みは数週間かけて徐々に楽になっていくことが多くあります。
次の骨折を防げますか
骨粗鬆症の治療と、転倒のリスクを下げることが中心になります。
どのような手術の選択肢がありますか
経皮的椎体形成術、バルーン椎体形成術、固定術などが検討されます。
高齢の場合、動いたほうがよいのでしょうか
急性期の痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で指導のもと体を動かすことがすすめられます。
関連:腰と背中の痛みの治療 ・ 椎間板ヘルニアと坐骨神経痛
このページは一般的な医学情報であり、個々の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。診断および治療は、診察と検査の結果に基づいて個別に判断されます。
