首の痛みが肩や腕に広がるとき:頸椎神経根症
首から肩、腕、前腕にかけて痛みやしびれが広がる場合、頸椎の神経根が圧迫されていることがあります。
執筆・監修:ラウ・ロクリム医師(Dr Lau Leok Lim)
整形外科・脊椎外科 シニアコンサルタント
MBBCh ・ MRCS(エディンバラ) ・ MMed(シンガポール国立大学) ・ FRCS(エディンバラ)
シンガポール保健省 専門医登録番号:11302F ・ Orthopaedic & Hand Surgery Partners ・ Gleneagles Hospital ・ シンガポール
原稿(英語版)公開日:2025年8月27日原稿(英語版)最終監修日:2026年4月1日日本語版公開日:2026年8月21日
ある患者さまの例
42歳の会計士の方は、一日の大半をデスクで過ごし、デスクトップとノートパソコンを使い分けていました。長時間の画面作業の後に首の張りを感じることがよくあったそうです。
残業が続いたある週、無理な姿勢で寝てしまい、翌朝、右の肩から腕、前腕にかけて強い痛みが走る状態で目覚めました。今回はストレッチやマッサージでも楽にならず、握力の低下も感じていました。
診察と MRI の結果、頸椎の椎間板ヘルニアによる頸椎神経根症と診断されました。

よくみられる症状
- 首の鋭い痛み、または焼けるような痛み
- 肩、腕、前腕に放散する痛み
- 指や前腕のしびれやぴりぴりする感覚
- 筋力低下、握力の低下
- 上肢の反射の低下
リスク要因
- 40歳から60歳(椎間板の変性)
- 首の反復動作や不適切な作業環境
- 長時間の画面作業による頭部前方位の姿勢
- 喫煙による椎間板への栄養低下
- 重体重作業や振動への暴露
- 体質的な要因
- 過去の首の外傷
主な原因
- 頸椎椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫
- 骨棘による神経の出口の狭窄
- むちうち損傷などの外傷
- 腫瘍や感染(まれ)
頸椎神経根症と頸髄症の違い
頸椎神経根症は神経根が圧迫される疾患ですが、頸髄症は脊髄そのものが圧迫される、より注意を要する疾患です。
| 頸椎神経根症 | 頸髄症 | |
|---|---|---|
| 圧迫される部位 | 神経根 | 脊髄 |
| 主な症状 | 片側の腕や手の痛み、しびれ、筋力低下 | 両手の使いにくさ、バランス障害、歩行の不安定さ |
| 経過 | 多くは保存療法で改善 | 放置すると進行することがある |
両方が同時に生じることもあります。大きな椎間板ヘルニアや高度な変性がある場合、神経根と脊髄の両方が圧迫され、腕の痛みと手の使いにくさが重なってあらわれることがあります。
似た症状を示す他の疾患
- 脳卒中や一過性脳虚血発作。突然の筋力低下、顔のゆがみ、話しにくさ
- 腉板断裂や肩のインピンジメント。肩中心の痛み
- 手根管症候群。親指、人差し指、中指のしびれ
- 尺骨神経麻痺。薬指と小指のしびれ
- 腕神経叢損傷。外傷後の広範囲な筋力低下
- 筋膜性疼痛症候群
診断の方法
- 身体所見の診察(スパーリングテスト、反射、筋力の確認)
- MRI または CT による神経圧迫の確認
- 筋電図(EMG)による神経機能の評価
治療の選択肢
手術を伴わない治療
- 活動の調整と姿勢の見直し
- 理学療法(牽引、筋力強化、神経の滑走運動)
- 薬物療法(消炎鎮痛薬、筋弛緩薬)
- 炎症を押さえるための硬膜外ブロック注射
姿勢の改善、理学療法、筋力トレーニングを組み合わせることで、多くの方が明らかに改善します。
手術による治療
- 前方頸椎手術(ACDF と ADR)
- 後方頸椎椎間孔拡大術
よくあるご質問
仰向けと横向きのどちらがよいですか
症状が楽になる方を選んでください。仰向けの場合は首を支える枕を使うと整列を保ちやすくなります。横向きの場合は、頭が水平に保たれる高さの枕を使い、首を前に丸めないようにしてください。
症状はどのくらいで治まりますか
理学療法、薬物療法、安静などの保存療法で、6週間から12週間のうちに改善する方がほとんどです。重症度や反応により個人差があります。
保存療法で改善しない場合は
MRI などの画像検査、神経の検査、手術についての相談など、さらなる評価を検討します。
手術後の回復にどのくらいかかりますか
多くの方は2週間から4週間で軽い活動に戻ります。
このページは一般的な医学情報であり、個々の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。診断および治療は、診察と検査の結果に基づいて個別に判断されます。
