前方頸椎手術(ACDF と ADR)
前方頸椎手術は、首の前側の小さな切開から、脊髄や神経根の圧迫を取り除く手術です。現在は主に二つの方法が用いられています。固定を行う ACDF と、脊椎の動きを残す ADR です。
執筆・監修:ラウ・ロクリム医師(Dr Lau Leok Lim)
整形外科・脊椎外科 シニアコンサルタント
MBBCh ・ MRCS(エディンバラ) ・ MMed(シンガポール国立大学) ・ FRCS(エディンバラ)
シンガポール保健省 専門医登録番号:11302F ・ Orthopaedic & Hand Surgery Partners ・ Gleneagles Hospital ・ シンガポール
原稿(英語版)公開日:2026年5月5日原稿(英語版)最終監修日:2026年5月5日日本語版公開日:2026年8月21日
前方頸椎手術とは

首の前側に小さな切開を置き、脊髄や神経根への圧迫を取り除きます。このアプローチは筋肉を切離しないため体への負担が少なく、頸椎の椎間板に直接到達できるという利点があります。
なぜ手術が必要になるのか
保存療法を行っても症状が続く場合、または MRI で神経や脊髄の明らかな圧迫が確認された場合に検討します。腕の痛み、しびれ、筋力低下、またはバランスの不安定さや手の使いにくさといった頸髄症の兆候が理由となります。
手術の目的
前方頸椎手術の一番の目的は、神経または脊髄の圧迫を取り除き、頸椎に安全で安定した環境を取り戻すことです。この目的が、どのアプローチや術式を選ぶかという判断よりも常に先に来ます。
ACDF:前方頸椎椎間板切除固定術
ACDF では、傷んだ椎間板を取り除いて神経や脊髄の圧迫を解除し、ケージと小さなプレートで脊椎を安定化させます。長く行われてきた信頼性の高い方法で、高度な変性、複数の高位の病変、不安定性がある場合に適しています。
体への負担について
1高位の ACDF は、手術としては負担の少ない部類に入ります。前方アプローチは筋肉を切離しないため、回復の経過は低侵襲手術に近いものになることが多くあります。
ADR:人工椎間板置換術
ADR では、傷んだ椎間板を可動式の人工椎間板に置き換え、首の自然な動きを残します。軻部のヘルニアが中心で、椎間関節が健全な比較的若い方に適しています。高度な変性、不安定性、骨粗鬆症がある場合には適さないことがあります。
ACDF と ADR の選び方

| ACDF | ADR | |
|---|---|---|
| 脊椎の動き | 固定される | 残る |
| 適している方 | 高度な変性、複数高位の病変、不安定性 | 比較的若い方、軻部の椎間板ヘルニア |
| 回復 | 同程度 | 同程度 |
| 長期的な課題 | 隣接する高位への負担と変性 | 将来的に固定に移行する場合がある |
| 適応の幅 | 広い | より選択的 |
どちらを選ぶかは、MRI の所見と診察の結果にもとづいて判断します。
手術後の回復
手術直後
1高位の手術であれば、多くの方は翌日に退院できます。2高位や 3高位の場合は、退院の時期を個別に判断します。
最初の数週間
軽い活動は可能です。重いものを持ち上げることは避けてください。術式によっては首の装具を使用することがあります。
長期的な経過
ACDF では骨がつくまでに時間が必要です。ADR では脊椎の動きが残ります。いずれの場合も、理学療法が姿勢と筋力の回復に役立ちます。
よくあるご質問
ADR と ACDF のどちらを選ぶべきですか
ADR は、軻部の椎間板ヘルニアがあり、椎間関節が健全な比較的若い方に適しています。ACDF は、高度な変性、不安定性、複数高位の病変がある場合に適しています。判断は MRI の所見と診察によります。
動きが残るので ADR のほうが常によいのですか
そうではありません。ADR は選ばれた方には非常に良い方法ですが、高度な変性や不安定性がある場合には ACDF が標準的な方法であり続けています。
仕事にはいつ戻れますか
デスクワークは1週間から2週間、軽い活動は2週間から4週間、制限のない活動は回復の経過により6週間から12週間が目安です。
傷あとは目立ちますか
切開は小さく、首の前面の自然なしわに沿って置かれます。
スポーツに戻れますか
多くの方は普段の活動に戻ります。衝撃の大きいスポーツは、より長い回復期間を要することがあります。
運転はいつからできますか
首の動きに無理がなく、強い鎮痛薬を使っていない状態であれば、おおむね4週間から6週間で運転を再開できる方が多くあります。時期には個人差があります。
関連:首の痛みの治療
このページは一般的な医学情報であり、個々の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。診断および治療は、診察と検査の結果に基づいて個別に判断されます。
