思春期の脊柱側弯症(思春期特発性脊柱側弯症)
お子さまの背骨の曲がりを指摘された方、または肩や腰の高さの左右差に気づかれた方に向けて、この先の流れをご説明します。
思春期特発性脊柱側弯症(AIS)は、10歳から18歳の子どもに最も多くみられる脊椎の変形です。成長期に自覚症状のないまま進行することがあるため、早期の発見と専門医による評価が重要です。
執筆・監修:ラウ・ロクリム医師(Dr Lau Leok Lim)
整形外科・脊椎外科 シニアコンサルタント
MBBCh ・ MRCS(エディンバラ) ・ MMed(シンガポール国立大学) ・ FRCS(エディンバラ)
シンガポール保健省 専門医登録番号:11302F ・ Orthopaedic & Hand Surgery Partners ・ Gleneagles Hospital ・ シンガポール
原稿(英語版)公開日:2025年9月3日原稿(英語版)最終監修日:2026年4月3日日本語版公開日:2026年8月21日
思春期の脊柱側弯症とは

思春期特発性脊柱側弯症は、それ以外に健康な子どもや思春期の子に生じる脊椎の三次元的な変形で、通常10歳から18歳の間に発見されます。「特発性」とは原因が特定されていないという意味で、遺伝的要因、成長のパターン、力学的な要因などが関与していると考えられています。
脊柱側弯症は成長期に自覚症状がないまま進行することがあります。適切な時期に経過観察を行わないと、短期間で大きく進行する例もあります。早期に発見できれば、より体への負担が少なく、結果も予測しやすい段階で治療を開始できます。

どのように発見されるか
シンガポールの学校検診では、前屈テスト(アダムステスト)が広く用いられています。前にかがんだ姿勢で、胸郭や腰の左右差を確認します。ご家庭で気づきやすい兆候には次のようなものがあります。
- 肩や腰の高さが左右で違う
- 前屈したときに片側の背中が盛り上がる
- ウエストのくびれ方が左右で非対称
脊柱側弯症が疑われる場合は、レントゲン撮影で側弯の角度を測定します。コブ角が10度を超えると脊柱側弯症と診断されます。あわせて、骨成熟度(リッサー徴候)、側弯のパターン、残された成長の見積もりを評価し、進行のリスクを判断します。
進行しやすいケース
すべての側弯が同じように経過するわけではありません。進行を予測する上で特に重要なのは次の三つです。
- 診断時の年齢が若い。12歳未満で診断された場合、今後の成長期間が長くなります。
- 残された成長が大きい。リッサー分類が低い、初潮前、身長の伸びが急な場合などです。
- 発見時の側弯が大きい。最初から角度が大きいほど、成長期に悪化しやすくなります。
これらにあてはまるお子さまは、おおむね4か月から6か月ごとの経過観察が必要になることがあります。
脊柱側弯症を三次元で見る
脊柱側弯症は三次元的な変形です。脊椎は横に曲がるだけでなく、椎骨そのものが回旋します。スライダーでコブ角を変え、胸郭を表示して前屈の視点に切り替えると、前屈テスト(アダムステスト)で背中の盛り上がりが分かる理由がご覧いただけます。
3Dモデルを読み込んでいます…
胸椎・背面から教育目的のイラストレーションです。コンピュータで生成したモデルであり、特定の患者さまの解剖を示すものではなく、診察やレントゲン検査に代わるものではありません。ここでは10度から20度を軽度、21度から44度を中等度、45度以上を高度として表示していますが、実際の方針は年齢、残された成長、側弯の経過によって異なります。
治療の選択肢
治療方針は、側弯の大きさ、残された成長、進行の可能性によって決まります。経過観察、装具療法、理学療法、手術のいずれか、または組み合わせで行います。
経過観察
10度から20度の側弯では、定期的な経過観察で十分なことがほとんどです。軽度の側弯の多くは、特に成長が緩やかになった後は安定しています。
装具療法
成長途中のお子さまで20度から40度の側弯がある場合、装具は進行の予防に役立ちます。通常は成長が終了するまで1日16時間から20時間程度装着します。理学療法との併用と、装着時間を守ることで効果が高まります。
理学療法
シュロス法などの側弯症に特化した運動は、姿勢、体幹の筋力、装具の効果を高めるのに役立ちます。自分の体を意識する助けにもなります。
心理面のサポート
思春期のお子さまは、外見に対する不安を抱えることがあります。ご家族の理解や、必要に応じたカウンセリングが支えになります。
手術を検討するとき
手術を行うかどうかは、側弯の大きさと残された成長の両方で判断します。
まだ成長途中のお子さまでは、側弯がおおよそ35度から40度を超える場合に、脊椎の動きを残す成長調節手術である椎体テザリング(VBT)が選択肢となります。
脊椎固定術は、一般に側弯が45度を超える場合に検討されます。また特定の状況、とりわけ腰椎の側弯や体幹の偏位が大きい場合には、40度から45度でも固定術を検討することがあります。
成長を残す手術:椎体テザリング(VBT)
椎体テザリングは、成長が残っている患者さまに適した低侵襲的な選択肢です。柔らかいコードで成長を調節し、脊椎の動きを保ちながら徐々に側弯を矯正します。
- おおよそ35度から40度以上の側弯が対象です
- 装具療法で進行を押さえられなかった場合に用いられます
- 残された成長が十分にあることが前提です

従来からの手術
骨成熟に達した方や、側弯が大きい場合には、次の方法が用いられます。
- 後方脊椎固定術。スクリューとロッドを用いて脊椎を整列し、安定化させます。
- 内視鏡下の矯正術。小さな切開で行う低侵襲的な方法で、回復が早い傾向があります。


よくあるご質問
子どもの脊柱側弯症が疑われるとき、どこを受診すればよいですか
小児および思春期の脊柱側弯症に経験のある整形外科医の受診をおすすめします。早めの評価により、経過観察でよいのか、装具や治療が必要かを判断できます。
手術をせずに治療できますか
多くの場合可能です。軽度から中等度の側弯では、経過観察、装具療法、理学療法で対応できることが多くあります。
どのような場合に手術が勧められますか
側弯の大きさと残された成長によります。成長途中のお子さまでは、おおよそ35度から40度を超える場合に、脊椎の動きを保つ椎体テザリングが選択肢となります。脊椎固定術は一般に45度を超える場合に検討され、特定の状況、とりわけ腰椎の側弯や体幹の偏位が大きい場合には40度から45度でも検討されます。
治療後にスポーツに戻れますか
多くの方が回復後にスポーツへ復帰しています。復帰の時期と程度は、行った治療の内容と回復の経過によって異なります。
脊柱側弯症は背中の痛みを引き起こしますか
軽度の側弯では痛みを伴わないことが多いですが、筋のバランスの乱れや急速な進行により不快感が生じることがあります。
脊柱側弯症は遺伝しますか
遺伝的な要因は関与しますが、単純な遺伝形式をとるわけではありません。ご家族に脊柱側弯症の方がいる場合は可能性が高まりますが、必ず発症するわけではありません。
予防できますか
できません。脊柱側弯症は姿勢や重いカバン、スポーツが原因で起こるものではありません。ただし早期に発見すれば、適切な時期に対応できます。
関連:脊柱側弯症の治療(種類・診断・治療の全体像) ・ 腰と背中の痛みの治療
このページは一般的な医学情報であり、個々の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。診断および治療は、診察と検査の結果に基づいて個別に判断されます。
